 |
10話 正反対の2人
すべての紅茶を試飲したあとで、菱山さんが言った。
「やっぱり香りの強い、華やかな紅茶が印象に残るな」
「香りも味覚の一部だそうですからね」
私の答えにうなずき、菱山さんは考え込む顔をした。
「コーヒーに比べると、紅茶は香りも味も刺激が少ない。
コーヒー専門店はたくさんあるのに、紅茶専門店が少ないのは、
そこに理由があるのかもしれないな」
それなのに、紅茶の新規事業なんか立ち上げて大丈夫?
と思ったとき、菱山さんの目が輝いているのに気づいた。
「問題があって、他の人ができないからこそ、
僕たちがやる価値がある。紅茶の販売が軌道に乗ったら、
紅茶カフェを立ち上げたいと思っているんだ。
芦田さん、これからもサポートよろしくお願いします」
それは力強くて、明るさに満ちた言い方だった。
……どうしてだろう?
菱山さんの目に、そして声に、なぜかドキドキしてしまう。
その夜、誠からメールが届いた。
係長になる試験の勉強をしているという。
『責任が重くなるから、係長なんかなりたくないのに(動く絵文字)
受けなきゃダメだって言われて、テンション↓↓↓』
というメールを見て、とっさに「つまらない人」と思ってしまった。
そして、新しい挑戦に目を輝かせていた菱山さんを思い出した。
|  |